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教会の敷地内はほとんどの部分に砂利が敷かれているので、車が通るとタイヤがそれを押し潰す音ですぐに判るのだ。すぐにエンジン音が消え、しばらくするとガラス戸が開けられた。
「のあせんせー」
振り返った子供たちが口々に彼の名を呼ぶのに笑って応え、ノアが不審そうにこちらを見る。声をかけあぐねているようなので、
「お帰り」
困らせるような挨拶で迎えてやった。
「はい、ただいま……何やってるの」
まずは律儀に返事をするところがいい。
「臨時採用で、英会話教室の先生」
簡単な状況説明でじゅうぶんだったらしく、ノアは肩をすくめて、入ってきたばかりの戸口から一歩外に出た。
「……母と、その夫は?」
「すぐ戻ってくると思うよ、ララ先生、小包受け取りに行っただけだから。堀込先生は、礼拝の後ご挨拶しただけだからなあ……」
この教会の人々はそれぞれ、先生、と呼ばれている。堀込牧師は、堀込先生。牧師に対して先生と呼ぶのは、一般的なことらしい。彼の伴侶であるララは、住居の一角に増築したこのプレハブ小屋でピアノと英会話を教えているから、ララ先生。ミドルネームに世界一美しい宝石を持つ女性の息子は、本職が高校教師なので、ノア先生。ノアは時々、英会話教室でアシスタントをすることもあるらしい。今の摂のように、イラスト付きのカードを持ったりしながら。
「いつの間に仲良く……」
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