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 振り返って後輩の長身を確認しながらページを閉じて、再びエクセルファイルを開く。フロアに入ってきた乾は摂を見ようともせずに、さらりと言った。 「先月のデータからコピペしちゃいなよ、計算式だけ」 「や、フォーマット変わってさあ。一円単位だぜ、今度のやつ」 「意味ねえな、それ」 「だろ? まあ、月報はP/Lのデータになるからしょうがないけどさ、日報なんて誰が見てんだっつーの……」 「社長が見てないのは確かだと思うよ」  報告書には、月報、週報、日報の三種類があって、そのうちの日報は言葉どおり、誰が見ているのかも判らない代物だ。真面目にやるのもばかばかしいので、毎日少しずつ言葉尻を変えて、数値をいじる程度で済ませている。月報はといえば不真面目に取り組むわけにゆかず、知らない間にプロテクトが解除されてしまったエクセルファイルが数値を入れても変化しないのに、苦戦しているところだった。 「…………ところで、なんで来たの? これから夜勤?」  乾がワイシャツの上に羽織っていた作業着を脱いで、向かいのパソコンに座るのを眺めながら訊ねる。個人の持ち物ではなく、このフロアに設置されたデスクパソコンの、メイン機だ。 「夜勤の途中だっての。LANのシステムがバグったつうから来たんじゃん」 「あ、そうそう。システム部に電話したら部長が出てさ、乾がいただろーって」     
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