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「本社からの操作で治せんのに……あのおっさん」
お互い本社勤務の経験があるので、部長クラスまでなら、実際に会ったことのある人が多い。
「二見さん計算式だけど、メールの添付に元データないの?」
三十分近く格闘していた問題をあっさり解決したのは、やって来たばかりの後輩だった。
「あーそーだー、そうだよー」
情けない声を上げながら、背凭れに盛大に仰け反る摂を、乾はやんわり労ってくれる。
「らしくないね、お疲れ?」
「経理部行けって言われたら無理……一日中こんなこと、やりたくない」
「離さないって、営業部が」
お世辞をそうと感じさせない後輩の言葉に、一瞬遅れで苦笑した時、デスクの上で携帯電話が震える。見やった画面には、メール着信の通知が浮かび上がっていた。
「お久し振りです」
件名はごくありきたりなものだった。この人物からメールが来るのは、一ヶ月までは空いていないが三週間振りくらいではあるので、久し振りという書き出しは間違っていないだろう。
「しばらく会っていませんが、お元気ですか? ゴルフやってますか? 日曜あたり、久し振りに一緒に回りたいね。秋が終わらないうちに」
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