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 ノートパソコンを開き、メールの受信ボックスを見る。仕事用のアカウントには取り引き先からのメールや社内メールが次々と舞い込んでおり、プライヴェート用はといえばいくつかのメールマガジンと通販会社のメールがほとんどだが、それでも時々はそれ以外のメールが送られてくることもある。  発信時刻は今日の午前中。sakura-k-cherryから始まるメールアドレスには、hikaru.jpgというファイル名の添付あり。疑う余地はないので迷わずそのメールを開き、ティーバッグで淹れた紅茶の湯気を顎で受けながら、画面をスクロールした。  姉からのメールはごく一般的な書き出しから始まり、近況をいくつか並べたあとに弟を気遣う文章と、P.S.お正月休みには帰ってきてね、で締めくくられていた。添付ファイル名のhikaruはひとり息子の名前で、母親に後ろから抱きすくめられた少年のアップ画像だ。今年の正月以来会っていないので、記憶にある彼よりずっと、顔立ちがはっきりしている。  アドレス帳から姉の名を探し、ボタンを押す。ひと口紅茶を啜る間に、電話は繋がった。 『せっちゃん、メール見てくれた? 元気?』     
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