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「そりゃ、マナーが」
そーりぃ、と決して言わない摂に、男は感心したようにあるいは揶揄うように、目瞬きをする。
「二度とやらないって誓うよ。ママに、パパに、ご先祖様、神様にも誓おうか?」
アルコールの残りが、摂をおどけさせる。お決まりの受賞スピーチみたいな言い草に、男は額を片手で覆い、喉を鳴らして笑った。
「余計なことしたなら謝る、ごめん」
そー、そーりぃ。礼儀正しい男だ。
「誓うよ。それから、あんたにも」
太い黒ぶちの中で目を丸くする彼に投げキッスを贈り、さよならと手を振る。気の毒な男が盛大に両眉を下げるのに、くるりと背中を向けた。
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