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はあ。今度のそれはには、げんなりした気持ちも混じっていたかもしれない。雨の気配が強まるのを感じて、摂は教会へ急いだ。
しばらくは、ぽつり、ぽつりとやっていた雨が、ごく弱い小雨に変わる。フード付きのジャケットに感謝しなければならないが、鼻や、頬の高くなった部分は寒さに痛み出している。柵と壁に囲まれた教会に着いた時には、ダウンの生地が特に肩から腕にかけて濡れていた。
礼拝堂は、扉の右側だけが開かれていた。
ジャリ、ジャリ、靴底で地面を踏みしめながら近づくと、扉の間から薄っすらと明かりが漏れているのが判る。フードを脱ぎ、ダウンに付いた水滴を払って、中を覗き込む。照明は聖壇に近いほうだけが点けられていて、ぼうっと、赤に近いオレンジはストーブの明かりだ。その、ストーブにしゃがみ込んであたっているのだろうか。
コン、コンコン。
ノアの注意を引くために、扉を数回ノックする。彼はそのままの姿勢でこちらを振り向き、ノックの主を知ると、
「摂?」
疑問形で摂の名前を呼んだ。
「寒い、雪降るかと思った」
この気温も、途中から降り出した小雨もすべて目の前の男のせいだと、非難するように口を尖らせる。
「どうしたの。まさか歩いて?」
「どうかしてた……」
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