絶対服従1

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 レーンになった轍を丁寧になぞりながら、良く見知った一台の車が入ってくる。日曜礼拝の遅刻常習犯が、今夜は実に三十分の余裕を持ってやって来たのだ。ノアは駐車スペースをじゅうぶん与えるために数歩後ずさり、車体が何度かの切り替えしを経て慎重にバックし、停止するまでを見届けた。サイドミラーがゆっくりと折りたたまれ、エンジンが止まる。ライトの消えた車の中から、運転手がわずかにドアを開けた。そのドアに手を添えて開き、彼の降車を手助けする。片足を地面に下ろした摂が顔を上げ、しばらく無言で、視線のキスを交す。無声の吐息だけが、冷たい空気に白く広がる。 「……クリスマスおめでとう」 「Merry christmas」  二カ国語同時放送のようなタイミングで挨拶が重なったのに二人して失笑し、ノアは運転席に屈み込んで、小さく摂の唇を啄ばんだ。 「いらっしゃい」 「うん、イブの礼拝なんて、二十年振りくらいかも」  忍ぶように笑いながら立ち上がり、勢い良く車のドアを閉める。キーをかざしてドアをロックし、摂はそのまま両手をダウンのポケットに突っ込んだ。毎年のことながら、ホワイト・クリスマス。寒がりな彼だから、ほんの短い間でも素手を外気に晒したくないというところだろう。  礼拝堂に、続々と、と言っていいペースで参列者が入っていくのを見て、摂が感心したように呟く。 「みんな早いなぁ……」 「摂も早いよ」 「そりゃあ、そのつもりで来たから」  誇らしげに言うから、笑ってしまった。 「あ、ねえ、やっぱり劇とかやるの?東方の三賢者?」 「はは、劇はないよ」     
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