絶対服従1

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 式次第を受け取り中に入ると、礼拝堂は既にずいぶん混雑していた。聖壇の近くにはこだわらず、後ろの方に二人分のスペースを確保する。七時までのほんの二十分程度の時間は、取りとめのない話をしていればすぐに過ぎてしまう。  ジャスト七時、聖壇に牧師が現れ、礼拝堂のざわめきはフェードアウトする。普段はラフな恰好の父だが、今夜はもちろん正装だ。 「みなさん、クリスマスおめでとうございます」  おめでとうございます、控えめな唱和に、牧師は軽く頷き微笑んだ。 「今年も雪に降られてしまいましたが、大勢の方と、イエス様のお生まれになった日をお祝いできることをとても嬉しく思います。どうぞリラックスして、最後まで楽しんでくださいね……お説教はまた、後程たっぷりと」  失笑の余韻を引き継ぐように、オルガンの前奏。プログラムどおりの進行だが、式次第の紙面に視線を落とす摂は、その先、その先に何が起きるのかを楽しそうに待っている様子。 「キャンドルサービスは、いつ?」  オルガンの音に紛れるよう、声を潜めて耳元に囁いてくるので、同じように囁き返す。 「ま、だ」  リタルダンド、そしてフェルマータで前奏が終わり、牧師がまた口を開く。     
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