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 経験からたいてい、結婚式は日曜日の前日、つまり土曜日に行われることが多いのだが、月曜日が祝日ということもあって日曜の今日が挙式だった。十月の祝日、体育の日の前日は朝から快晴だった。  高い窓から太陽がさらさらと降り注ぐ、少々ぼろの小さな礼拝堂で、式は順調に進んでいる。  てっきりホテルか結婚式場内に併設された教会だと思い込んでいた摂にとって、古い石造りの、はめられたガラスも古めかしく素朴な空間はとても意外で、しかし夫婦となる二人にはぴったりだと思えた。地元育ちの奥さんが、子供の頃に通っていた教会なのだそう。純白のバージンロードを辿った先のシンプルな聖壇に立つ、夫となる人と妻となる人、それから牧師を最後列からぼうっと眺める。左側の窓から当たる強い日差しに少し、目を眇めながら。  白髪混じりの立派な黒ひげをたくわえた牧師は、風変わりな誓約を要求する人物だった。 「あなたはこの姉妹と結婚し、神の定めに従って兄弟になろうとしています。あなたはその病める時も、健やかなる時も、常にこれを愛すことを誓いますか?」 「はい、誓います」 「敬うことを誓いますか?」 「はい、誓います」 「慰めることを誓いますか?」     
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