絶対服従1

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 言いつけを守って、礼拝堂に戻る。  隣りに座っていたカップルからもう一度火をもらい、次に消すのは、礼拝が終わる時だ。前奏に対して後奏、エンディング・テーマが静かに鳴り止んで、今年の燭火礼拝も和やかに終わったことを知る。そこで帰って行く人もいるし、また、茶話会に出席する人もいる。ピアノ教室と英会話教室が開かれる建物は、同時に茶話会の会場にもなるのだ。 「ララ……お母さん」 「なに?」  彼女の母国が流通の起源と言って良いだろう。東インド会社の最高の功績、透明な薄茶色の液体が入ったカップを唇から離して、ララが振り返る。 「あー、父さんは?」 「そこ。昔馴染みの信徒さん達と」  一杯引っ掛けてる、のジャパニーズ・ジェスチャー。実際に呑んでいるのはシャンパンだろうけれど。 「弱いくせに好きなんだから。明日も朝からクリスマス礼拝なのに、牧師が二日酔いって、あり?」 「ありじゃない?それで、俺、今から出るんだけど」 「うん」 「帰らないかも。こっちも一杯」  引っ掛けるから、と同じジェスチャーで嘘をつく。 「I see」 「……じゃあ、よいクリスマスを」 「あなたも、ノア」
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