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後部座席の窓から外を眺めて、なるべくなら道を憶えてしまおうと努める。
途中裏道でショートカットを行ったようだが、メインの道路を走ればたぶん、摂の住むマンションには着けそう。料金を払ってタクシーを降りる。集合エントランスのインターホンを押し、入り口を開けてもらい、エレベーターを使うほどの階ではないので歩いて上った。
ドアの前でもう一度、チャイムを鳴らす。
中からそれを開けた摂が、絶句するノアを見上げて首を傾げた。
「どうしたの?」
「……ちょっと。目の前の……夢のような光景に感動してる」
正直に打ち明けると、
「あっはっは」
バスローブ姿の男は闊達に笑った。
「いつもってわけじゃないけど……嫌いじゃない」
真っ白な、脛まで隠す長いバスローブだ。手触りを示すように胸元を撫でて見せて、摂はこちらへ腕を伸ばした。柔らかなタオル地の中の腰を抱き返す。今夜初めて、少しアルコールの染みた彼の舌を味わうことができた。
「……ん」
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