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「はい、誓います」 「重んじることを誓いますか?」 「はい、誓います」 「守ることを誓いますか?」 「はい、誓います」 「その生命の限り、堅く貞節を守ることを誓いますか?」 「はい、誓います」  畳みかけるような問いかけに、緊張でトーンの高くなった声が、何度も同じ文句を繰り返して答える。牧師は満足したような、それでいて最後列の摂から見ても判る茶目っ気のある笑顔を見せて、大きく頷いた。姉妹の部分を兄弟、兄弟の部分を姉妹に入れ替えて、同じ問答を新婦とも行う。元・国内線のフライトアテンダント、こちらは落ちついたものだ。  それから結婚指輪の交換があり、彼の手が新婦のヴェールをそっと持ち上げる。それは形式的な動作で、誓いのキスはなく、ヴェールはすぐに下ろされた。 「博と由香は、神と公衆の前で夫婦となる約束をしました。故に私は父と子の精霊の御名において、この兄弟と姉妹が夫婦であることを宣言します。神が合わせたもうたものを、人は決して離してはなりません。アーメン……」  ワーン、と、電子オルガンのぼやけた和音。     
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