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 背の高さと、アクアマリン色のタートルネックが印象的だった。  背が高いと感じたのはその時のとても相対的な錯覚で、身長が伸びきってから横並びに立ってみれば別段、彼が長身だというわけではなかったのだけれど。  「弟の摂(せつ)、せっちゃん」  六歳離れた姉から怒られたり意地悪されたことは一度もなく、摂は彼女の大のお気に入りだった。姉はいつも、摂のことをこう呼ぶ。  「せっちゃん、恥ずかしがらないで」  男の右腕に自分の片手をそっと添えて、もう片方の手で摂の服を引っ張りながら、姉が笑う。二代かけて薄まったアングロサクソン系の血が、少女期のそばかすを薄っすら残していたって、彼女はキュートだ。  姉弟を交互に見比べて、彼は、不似合いな幼い動作で小首を傾げた。  「はじめまして、せっちゃん?」  姉に倣うような、まるで生まれたての赤ちゃんや子犬に話しかけるようなトーン。高校生の少年にどう接したらいいか、彼なりに考えたのだろう。子供扱いされたと幼稚なプライドが傷いたなんて、気付かなかったに違いない。不愉快さと同時に、甘く甘く、身体じゅうの血が重力に逆らってゆっくり浮き上がっていくのを感じたことも。  彼の穏やかな瞳の中から、自分が自分を見返している。造作の違う点も多いのだが、それでも姉弟で良く似た顔立ちだ。 「ねえせっちゃん、彼、わたしと結婚するひとなの」  可笑しいったらない。  おめでとうと言って、姉のフィアンセとの握手に応じたら、それでおしまい。翌年に彼らは結婚し、摂にはひとり兄ができた――ストーリーをおさらいする必要なんて、ないだろ?
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