トラディショナル 継承の美学

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 夜になった。 「では、そろそろ参りましょうか」  ヒメコは歩き出した。  夜に人間がいないことは知っていた。だが、白い体はよく目立つ。万が一に備えて慎重に、かつ迅速に体を前へと繰り出した。  蚕座を降り 床を伝う。壁にぶつかると、そのまま這って登った。窓は取り付けが悪くて完全に閉まらず、少し隙間ができることは確認済だ。ヒメコはそこから外へ出ようとした。  窓に何者かがいた。ヒメコは体を強ばらせた。  敵ではなかった。昆虫のサナギのようだった。すでに中身は無く殻だけのようだ。ヒメコは一安心し、改めて外の世界へと繰り出した。
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