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「すごい……」
吐息のように、感嘆が漏れた。
夜風が熱気を運んできた。草木は静かに揺れている。カエルの鳴き声は一層にやかましく聞こえた。頭上には天井がなくなり、代わりに満点の星空が広がった。多くにとってはごく自然の夏の月夜。しかし今まで室内暮らしだったヒメコにとっては途方もなく広く、遠く、美しい光景だった。
同時に、ピリリとした緊張感がヒメコを襲った。此処から先は未知の領域。強いものが生き残る弱肉強食の世界。すでに多くの視線がヒメコに向けられているように感じる。眠っていた野生の勘が蘇ってきたのだろうか、頭が危険信号を発していた。
「いつまでもこうしてはいられませんわね」
ヒメコは再び歩き出した。
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