山笑う

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「あらまあ!高かったでしょう? あまり無理をしないでよ。 私たちはね、安田くんと一緒に ご飯を食べるだけで楽しいんだから」 「無理なんてしてませんよ。 こっちこそ、毎晩タダ飯たべて、 本当に心苦しいです…。 いっそ食費を受け取ってくだされば スッキリするんですけど」 カニ…。 いいなあ…。 という顔をしていたのが伝わったらしく、 オバさんはグイッと顔を近付けてくる。 「里深ちゃんも食べて行きなさい。 どうせ寄せ鍋のつもりだったんだし、 豪快にカニも煮込んでやるわッ」 「えーっ、いいんですかあ?!」 ヒャッホウと小躍りしながらふと気付く。 さっきまで泣いていたのに、 案外と笑えるもんなんだな…と。 そして泣いていた理由を思い出しそうに なって、記憶にムリヤリ蓋をする。 「いいのよ。 だって人生最大の不幸に遭ったんだから、 このくらいのラッキーは当然でしょ?」 「えと、それでは、ゴチになりまーす」 じゃあ晩御飯の準備を手伝ってと言われ、 邪魔にならない程度の活躍をする。 ダイニングテーブルの上では安田くんが、 これまたイケメンだった女神の父親… すなわちオバさんの旦那さんと、 ああでも無いこうでも無いと言いながら ズワイガニを捌いてて。 女神と男神は赤さまの面倒を見る為、 別室に籠っている。 「えと…そう言えば結局、 赤さまを見せて貰ってませんけど…」 「あらヤダ!蟹で全部忘れてたわ!! もうご飯の準備はひと段落したことだし、 赤さまに会いに行きましょう!!」
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