山笑う

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はむっ。 オバさんも同時に口に入れ、 2人揃って無言のまま咀嚼する。 途端に広がる肉汁と、 シャキシャキ筍のハーモニー。 「…おいしい」 「ねっ?!ね!!美味しいね!!」 この喜びっぷりから察するに、 どうやらオバさんも初めて食べたらしい。 残念ながら半分なんてアッという間に 完食してしまい、続けてあんまんへ。 はむっ。 何故かこちらの方は冷めていたが、 それでも十分美味しかった。 「…こっちも、おいしい」 「うん、うん、良かったね。 ふふっ、この前見たドラマで言ってたわ。 てっとり早く幸せになるには、 美味しい物を食べればいいんですって」 なんだかその言葉が、妙に心に刺さった。 もうすぐ結婚して、 幸せになれると思っていたのに。 私、これでも結構努力したよ?? どんなに仕事が忙しくても 愚痴とか一切言わなかったし、 家事だって全部私が引き受けた。 ゲームばかりで返事をしてくれなくても、 遊びに連れて行ってくれなくても、 ひたすら我慢して耐えたその代償が 友人との浮気ってどういうことッ?! 「なんか私、幸せになんて なれる気がしないんですけど…」 そんなことをボソリと呟くと、 オバさんはぐいぐい顔を近づけて来た。
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