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ラッキー…では無いと思うけどなあ。
励まして貰った恩を忘れて
ちょっとだけ反抗的な目で見ると、
オバさんはいきなり熱弁し出す。
「私の同僚というか部下でね、
森嶋啓太って男がいるんだけどね、
とにかくコレが女癖悪くて。
い、言い難いんだけどセ…フレ?
そういう女性がたくさんいてね。
なんか思いついたら2~3人に電話して、
空いてるコと一晩過ごす感じの
とにかくすっごく乱れた生活してて、
本当に女の敵!って感じなのね」
オバさんは興奮すると
身振り手振りが激しくなるらしい。
さっきからビシビシと私を叩いているが、
文句を言える空気では無いので我慢する。
「でね、数々の名言が有るのよッ。
『女なんて皆んな同じ』とか、
『誰かと真剣に付き合うのは面倒』って。
ほんと女をバカにしてると言うか、
わたし史上ダントツのダメ男なの。
ああ、もう…そうだわ、
今からウチに来ない??」
…え?
あまりにも唐突なお誘いに面食らう私。
しかしオバさんは名案であるかのように
イキイキと続けるのだ。
「今ね、娘が里帰り中でウチにいるの。
えっと赤ちゃん、そう、とっても可愛い
赤ちゃんを生んだのね。…だから」
なぜ急に言葉に詰まるのか??
本当に面白い人だなあ。
きっと凄く素敵な提案だと思ってて、
それで興奮してしまったのだろう。
「さ、行きましょう!
ところでアナタのお名前は?!」
「え、あの、長山サトミです」
「サトミはどんな字を書くのかしら?」
「えっと、里山の里に深いと書いて
“里深”です」
『素敵な名前ね!』
そう言ってオバさんは勢いよく
私の腕を掴んで立ち上がった。
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