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シーン11 数日後
パシッ
「なんで野球なんて授業でやるかな?」
パシッ
「担任が野球好きだからじゃね?」
パシッ
「佐倉は野球やってるからいいけど、」
パシッ
「うん」
パシ
「俺なんて突き指したら部活できないんだけど」
パシッ
「は?東って何部だっけ」
パシッ
「吹部」
パシッ
「あれ、お前も吹部?」
キャッチボールが一瞬止まる
「おう。どうかした?」
「楽器やってたんだ。」
またキャッチボールは再開される。
「楽器なにやってんの?」
パシッ
「ん?」
ああ、
「フルート」
俺は今
「そうなんだ」
嫌な笑いを浮かべていないだろうか。
***
あれから私は個人練習がある日は西校舎の紅葉が見えるところで練習するようになった。
少し寒いけど、日も当たるしそこまで冷えない。すごく寒い日は出ないし。
今は少し暇な時期なせいか、個人練習も多めだ。
定期演奏会まではまだ少し時間があるし、幹部の先輩も色々進めたいんだろう。
私はお気に入りの曲を練習する。
誰かに聞かせるような気持ちで。
誰かって誰。
私は待っているのかもしれない。
「また吹いてるの?」
ほら
「また来たの?」
こうやって話しかけてくれる彼を
***
「佐倉最近いつもどこいってんだよ。バッテリーの俺の気持ちも考えろよ」
「ごめんって。俺にはお前しかいないから捨てないで中川ー」
「キモ…」
「どっかいくって言っても10分くらいだろ。大便だよ大便。」
「見え見えの嘘ついてんじゃねえよ」
今日も聞こえるだろうか。
野球部の練習場所は西校舎側のグラウンドだ。
たまに銀の笛の音が聞こえる。あれはフルートっていうんだ。
俺は待っているのかもしれない。
「あ、大便」
こうやって艶やかな音色が聞こえてくる瞬間を
「もういいから…早く戻ってこいよ。」
「おう!」
俺は走り出す。音のなる方へ。
***
「俺の相棒は誰にお熱なんだ…?」
寒空の元練習する俺達はみんな総じて頬が赤くなっているから、期待のルーキーの頬に多少の赤みがさしていても、それはほかの部員と大差ない。
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