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恋人と喧嘩をすれば、彼を呑みに誘って愚痴を聞いてもらった。諭されたら、怒って鬱憤を晴らした。
彼が振られたら、泣き言の電話に付き合った。ベロベロで支離滅裂な話に何時間も。
仕事の愚痴もお互いにぶちまけあった。
気持ちが変わったのはいつだろう?
チャイムの音を聞きながら、彼女は考える。
何度目かの失恋話で、泣いた自分を一晩中、慰めてくれた時だ。
「おまえはいいオンナだ!俺の親友だ!いつかきっと最高の男がおまえを見つける!」
そんな言葉に彼女は気づいた。
どんな男も、彼ほど自分のことをわかってくれないことに。
だけど彼女は、自分の中に生まれた気持ちに戸惑いがあった。
「夫や、恋人は大概の女性が持てるけど、異性の親友を持てるってほとんどないから、私はラッキーだ」
自分自身が吐き続けた言葉に、がんじがらめになっていた。自分の言葉が、素直な気持ちを見つめる邪魔をしていた。
女友達が、彼のことを好きだと、紹介してくれと言ってきたときに断らなかった。
もしかしたら彼が断ってくれるのではないかと思っていた。
そしていつもの彼との特別な時間が戻ってくると。
あたりまえのように繰り返される時間の中で、きっと彼も気づく。自分のことを一番理解している人間が誰なのか。
そんな時がくることを、彼女はひっそりと祈っていた。
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