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「《星を一番近くで見たかった》だそうだよ。
私には理解できなかったが、人一倍努力した爺さんは本当に誰よりも近くで星を見ていたことだろうよ。きっと今でもそうさ」
祖母は涙をこぼしながら笑みを浮かべた。
私もそれに釣られ、涙をこぼしそうになったが祖母が指し示す空を見上げた。
「……!!」
空には視界に収まりきらないほど無数の星々が散りばめられていた。この情景を言葉にすることはできなかったが、一つ分かったことがある。
「爺さんが一番近くで見たい理由が分かった気がする……」
「そうかい。 やっぱ似た者同士やね」
祖母は優しく微笑み私を見ていた。もしかしたら祖母には昔の祖父の姿を私に重ねていたのかもしれない。
「それじゃあ私は中に入るからね。 ちゃんと爺さんに挨拶しときなよ」
私は軽く頷き、祖母が家の中に入るのを確認する。
そして私は再び空を見上げ、爺さんに語り掛けた。
「今からでも遅くはないだろ? 待ってなよ、すぐ会いに行くから」
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