幻の炒飯を求めて

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 レシピを盗むのは簡単だった。  この怪盗アンジュ様にかかれば、夏瓜も一般人、厳重な金庫もただの箱。  あとは調理するだけ。  翌日。  日中のわたしはカフェ「ミラージュ」のマスター。  アンジュではなく、ネージュと名乗っている。  相棒のジェニーもここでは従業員で、アルフレッドという。  戦場のようなランチタイムが終わったころ、ふらりと現れた客。  なんと夏瓜だった。 「ちょっと、どういうこと!? 実食するのはあなたじゃなかったの?」  わたしは慌ててアルフレッドを店を奥に引っ張った。 「俺が招待した。本人なら自分のレシピかどうか見抜けるやろ」  けろりと言ってのけるアルフレッド。 「ついでにわたしが犯人だってこともバレるわね」  さあっと血の気が引く。  だって、本人より上手に作れるかもしれないのだ。  かといって、あまり待たせるのもよくない。  わたしは覚悟を決めて炒飯を提供した。
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