幻の炒飯を求めて

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 夏瓜は黙って一口食べた。  もぐもぐゴックンするまでの数秒が長く感じる。  わたしはどきどきしながら待った。  やがて夏瓜が口を開いた。 「料理は愛情。おとなしくコーヒー淹れてパンケーキ焼いてた方がいい」  そして席を立ってしまう。  炒飯は完璧だったらしい。 「悔しいんでしょ。素直に負けを認め──」 「コソ泥には一生作れないってことを教えてやる。ついてきな」  わたしの言葉をさえぎり、夏瓜はさっさと出ていった。  わたしとアルフレッドも急いで後を追う。  件の中華料理店で待つことしばし。  夏瓜が炒飯を持ってきた。  わたしとアルフレッドはさっそく一口食べた。  口の中でパラパラにほぐれるコメ。  レシピ通りに入っている、みじん切りの具材。  さまざまな香辛料が複雑に絡み合って、美味しいのひと言に尽きる。
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