【第4話・序章】「20年前」

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 最後にヴィズルに会ったのはいつだっただろう?  半年前……いや、三ヶ月前か? ……それとも数週間前?  アドビスは思わず記憶の糸をたぐった。  スカーヴィズのふかふかの寝台に寝かされているヴィズルが、以前会った時よりも目に見えて、大きくなったような気がするのだ。  背丈も随分伸びているし、筋肉がうっすら目立ちだした細めの腕からして、外見だけなら十才ぐらいに見える。  ――そうだ思い出した。一ヶ月前だ。  ゆっくりうなずいたアドビスは、子供の成長する早さに驚きつつ、目を覚まさないその顔を静かにながめていた。
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