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『お前の子供か?』
『馬鹿言うんじゃないよ。髪の色でそう思ったのなら仕方ないけどね』
海賊船に見慣れぬ子供がいることに驚き、その素性をスカーヴィズに尋ねてみた所、彼女はしれっとした笑みを浮かべこう答えた。
『あの子は赤子の時拾ったのさ。今にも沈みそうな樽の中に入って漂流していた所を見つけてね。東方連国の領海近くだったんだけど。可哀想に……おそらく海賊に襲われた客船の子供だろうよ……』
スカーヴィズはその後、物憂気に瞳を伏せてつぶやいた。
『私も海賊だけどね――こんなやり方をする連中を、いつまでも海にのさばらせやしない。絶対にね』
スカーヴィズは海賊の中でも寛大な方だ。無条件で降参し、積荷を渡せば乗組員の命を無用に奪わない。彼女は常日頃、海賊は“海の貴族”と言い放ち、その場しのぎの仕事はしない主義だ。
だからこそ、一部の横暴な同業者のせいで、ヴィズルのような子供が次々と命を奪われていく現実を、見ていられなかったのだ。
――最も、これからが大変なのだろうが。
お前なら自らの理想を貫き通せるだろう。お前は……強い女だ。
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