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「初めは読めない字とかあったけどさ、絵を見て、こんな感じかなーって想像したんだ。アドビス、読むからさ、あってるか聞いてくれよ」
ヴィズルは寝台から飛び下りて、本を取りに行こうとした。
「ヴィズル、待ってくれ」
「アドビス?」
アドビスは微笑みつつ小さく首を横に振った。聞いてやりたいのはやまやまだが、そろそろスカーヴィズが朝食の支度を整えるだろうし、ここにいる時間も残り少ない。だから、言うのは今しかなかった。
「ヴィズル。お前は賢い子供だ。きっと確かめなくても、あっているさ」
ヴィズルは頬をふくらませた。口をすぼめ、不満げに目を細める。
あやふやにされるのが嫌いなのだ。
「でも――」
アドビスはヴィズルの肩に両手を添えて、その場に膝を付いた。ヴィズルは不思議そうに、じっとアドビスの顔を見つめ返す。もともと勘の良い子供である。嫌な予感を察知したのだろう……その素直な眼が不安にきらめいた。
「私はもう船長の側についてはやれない。だからこれからはお前が、私の代わりに船長を守ってやって欲しいのだ――ヴィズル」
「……どういう……ことだよ……それ……」
ごくりとヴィズルが生唾を飲む。
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