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「アドビス……もう来ないなんて、言うなよ……。オレ、あんたにもっといろんなことを、教わりたい。あんたみたいな、船乗りになりたいんだ」
アドビスはともすれば指にからみつく、ヴィズルの髪をすいていた。
が、その動きが一瞬止まった。
「お前には……大勢の仲間や船長がいる」
「だけど……!」
ヴィズルはアドビスの胸にうずめていたその顔を上げた。
「船長はすごいさ。だけど、オレはもっと船のことを知って、早く船長の役にたてるようになりたいんだ。だから、あんたみたいな船乗りになりたい」
「ヴィズル」
ヴィズルは右手で鼻をこすった。赤く腫れた目と頬を伝う涙の筋がくっきりついて痛々しげな顔だが、口元はぎゅっとひきしめられていて、その決意の深さがはっきりとうかがえる。
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