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「コンパスだ! これは舵輪!」
アドビスはゆっくりうなずきながら、目を細めた。
「ああそうだ。こいつには船乗りに必要な知識が、ぎっしり詰まっている。私の宝物だ」
瞳を宝石のようにきらめかせ、はや期待に胸を踊らせるヴィズルに本を手渡す。ヴィズルは両手にそれを持ったまま、うっとりとした微笑を浮かべた。
「ありがとう」
アドビスはヴィズルの肩に手を置いた。
「難しい所やわからない言葉は船長に教えてもらうんだ。彼女もまた、優秀な船乗りだからな」
ヴィズルはうなずきつつも、瞳を伏し目がちにしながら、手にした本とアドビスの顔を交互に見比べていた。
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