4-1 女海賊の島

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「ロワールハイネス号の船鐘」【Ⅳ】  第4話「碧海の彼方」  珊瑚のかけらが混ざったきめ細かい乳白色の砂を、さわさわと、透き通った海水が優しく洗っていく。  大人の足で一日あれば一周できる小さな島だが、その周囲は切り立った崖や岩場で囲まれており、唯一上陸できる浜辺は、北側の湾内にあるこの場所だけである。  幹に繊維状の毛を生やした枝のない木が、細長い葉をこんもりと茂らせ、その下で原色の鮮やかな大輪の花が、かぐわしい香りを周囲に漂わせる。  昼を過ぎた太陽は、それらを慈しむように光を降り注いでいるようだ。    無地の白いシャツの襟を立て、黒いズボン、同色のブーツというラフな格好で、ヴィズルは一人、人気のないこの小さな浜にたたずんでいた。  寄せては返す波の音を聞きながら、両手を腰に当てて島の中央部へ視線を向ける。太陽の光が、夜色をしたヴィズルの瞳を明るい青へ変化させると、緑鮮やかな木々の間に見え隠れする、石造りの建物を映し出す。
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