0人が本棚に入れています
本棚に追加
1
嵐の日、私は家に帰ろうとしていた。叩きつけるような雨、それは私の身体を蝕み、重みに耐えきれず遂には地面に落ちた。
「大丈夫?」
雨音に紛れて聞こえた音は、私の、私たちの恐れる種族のもの。身体に叩きつけられていた雨が弱まった。それはどうやら、この人間のせいらしい。人間は、この忌々しい雨からその身を護る術を持っている。でもそれを、羨ましいとも思わない。雨は、私たちにとって必要なものだから。
けれど、どうにもさっきから力が入らない。どうやら地面に落ちた時に身体を強くぶつけてしまったらしい。このまま雨があがり、天気が晴れ、もう一つの宿敵である動物が徘徊を始めた時、私は死んでしまうだろう。
冷たい地面から、柔らかい何かに変化した。逃げなければ。そう思うのにこの小さな体は目の前の大きな存在に太刀打ちなどできない。
熱を奪われた身体に、柔らかい地面からじわり、じわりと熱が伝わってくる。
「帰ろう、家に」
聞こえた音の意味は理解できない。けれど、何故だか、安心して目を閉じた。
身体を包むように触れる、ふわふわとした感触は正直、心地よいと思えない。あまりに触れたことのないものだからかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!