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「あ、流れ星」
俺がそう言うのと、隣の自販機でガコンと音がするのと、ほぼ同時だった。
「え、どこ?」
「もう消えたよ。一瞬のことだったから」
「えー……本当に見えたの?」
少し不機嫌さを滲ませた声で、アオは言った。
そう言われると自信はなかった。確かに流れ星だったと思うが、人生の中で目にしたのは今ので二回目だ。
「飛行機とかじゃなくて?」
「飛んでないから、たぶん」
「……確かに」
隣で空を見上げて、しばらくキョロキョロとしていたアオは、今度は笑顔になって言った。
「良いなあ、流れ星。ねえ、何か願い事した?」
「いや、特に……本当に一瞬のことだったし」
そう言うと、アオは君らしい、と言ってくすくすと笑った。
「でもさ、もしできるんだったら、何をお願いしたの?」
「さあ……願い事か。やっぱり志望校に合格できますように、とか?」
「この時期だと、やっぱりそうなっちゃうよねえ」
ちょっと夢がないけど、とアオは残念そうに言うが、彼女が願うことも今は同じ内容らしい。
段々と上級生の間に流れる空気がピリピリとしてきている。直接関わるようなことがなくても、そういうものは何となく感じ取れるものだ。
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