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「あ、見て、流れ星」
後ろから声を掛けられて、俺の意識は現実に戻ってきた。
何となく記憶を辿って、ボーっとしてしまっていたらしい。
反射的に空を見上げるが、そこに流れ星の姿はない。
「消えちゃったよ。本当に一瞬だね」
そう言って、アオは俺の隣に腰を下ろした。手にはココアのペットボトルが握られている。
「何か、前にもあったね、こういうシチュエーション」
「そうだな。今、ちょうど思い出してた」
「今回は、流れ星を見たのは私だったけどね」
アオは楽しそうにそう言って、ココアを一口飲んだ。
アオとは三年になってクラスが分かれたので、最近はこうして時々バス停で会うくらいしか接点がない。おそらく、アオは普段はちゃんと時間を見ていて、一本早いバスに乗っているのだろう。
「どう? 最近は」
「相変わらず勉強ばっかりしてる。アオは?」
「私も。やっと、どの教科も納得できるくらいまで点数が伸びてきたの」
「そんなもんだよな。受験生なんだし」
俺は温くなってしまったココアを飲み干して、空のペットボトルをカバンに入れた。
「そういえば、今回は願い事、出来たのか?」
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