流れ星

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流れ星

 夜が来るのが早くなった。  すっかり暗くなった外に出ると、びゅう、と冷たい風が吹く。解けたマフラーを巻き直して、足早にバス停を目指した。  高校三年生の冬。俺は他の多くの受験生と同じように、放課後は学校に残って勉強をしている。今日も下校時刻を告げる放送が流れるまで過去の試験問題を解いていた。少し早めに学校を出ようと思っていたのに、手間取っていたらあっという間に時間が過ぎてしまった。  バス通りまで出たところで、目の前を一台のバスが走り去っていった。電光表示を見て、自分が乗りたかったバスに間に合わなかったことを知る。  俺は小さくため息を吐いた。  歩く速度を緩めて、バス停までの道を歩く。  その途中、いつもなら素通りしてしまう自動販売機の前で足を止め、少し悩んで財布を取り出す。上手く小銭が取り出せなかったので一度右手の手袋を外し、ボタンを押してから急いではめなおした。一瞬のことだったのに、指先が凍ってしまうのではないか、と思うくらいに外気は冷たかった。  ガコン、と音を立てて、落ちてきたペットボトルを拾い上げると、手袋越しでもぬくもりが伝わる。  それを両手で包み込んだまま、誰も居ないバス停まで歩いていく。冷え切ったベンチに座ると、その冷たさが伝わってきて思わず体が震えた。  ペットボトルの蓋を開け、一口口に含むと、甘さが口の中に広がる。今日は何となくココアを選択したのだが、正解だったなとぼんやりと思った。  ふう、と吐きだした息が白く凍って、風に流れていく。それを目で追いながら、俺は一気に半分ほどココアを飲んで、一度蓋を閉めた。  すぐそばに街灯が一本立っているが、明かりは薄暗く、参考書を開く気にはなれない。  次のバスまで、二十分ほど時間があった。  俺は時間の使い方に困って、手の中でペットボトルを転がした。  その時、ペットボトルのラベルを見て、ふと思い出した。  前にもこうして、ココアを買ってバスを待ったことがある。そしてその時は、俺は一人ではなかった。
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