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2:無期懲役の殺人犯
俺の名前は田代正昭。刑務所内では番号で呼ばれるから良かった。タレントの田代まさしが覗き事件や薬物事件を起こした時期俺は丁度学生で、似た名前から周りに弄られて不快だった。
俺は今、黒羽刑務所の中にある巨大なオフセット印刷機で官公庁の印刷物を発行している。勿論、機密なんて類の物ではない。一般に配布するポスターやパンフレットなどを印刷している。
俺の年齢は31歳。年齢は若い方だから、俺と年の近い受刑者は此処より遥かに面積が広い、職業訓練施設にてフォークリフトや建設、測量などの技術を学んでいる。手に職を付ければ、社会復帰も容易い。
ところが俺は2年前に殺人事件を起こしている。ラブホテルで女子高生の制服を着た21歳のデリヘル嬢を呼んだ際、俺は本番を断られたことに逆上して、コンドームを使わずに生でレイプした後、生意気な女だったから構わず殴り殺した。俺はホテルに女の遺体を残して逃げようとした。だがデリヘル嬢を送迎する男がホテル前で待機していて、どうして俺が先に出て来たか不審に思って近付いて来た。俺は逃げるために相手に格闘を挑んだ。相手は男だからデリヘル嬢ほど簡単には行かなかったが、何度か殴って弱らせた後、首を絞めて絞殺した。これでバレないと思ったのだが、あろうことか警邏中のパトカーに乗っていた警察官達に殺害の様子をバッチリと見られてしまった。銃を持った警察官達に勝つのは無理と判断し、俺は現行犯逮捕された。
俺は取り調べでは寡黙な方だったが、刑事達の質問には素直に答えた。協力的に自供した方が罪も軽くなると思ったからだ。先月10月1日に宇都宮地裁で判決が下され、無期懲役に処されることが決まった。俺も検察も互いに控訴しなかったのであっさり刑が確定し、此処黒羽刑務所に収監されることになった。裁判は面倒臭いから死刑以外なら何でも受け入れるつもりだった。裁判は争わなければ比較的短期間に終わらせられるのでそちらの方が良いと国選弁護人とも話し合って戦略を決め、満足の行く裁判となった。
つまり、薬物は絶対にやらなかったが、田代まさしより俺の方が遥かに極悪人である。
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