4:人を腐らせる無期懲役

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4:人を腐らせる無期懲役

 俺は刑務官には抵抗せず従ったので、暴力団関係者の居なかったオフセット印刷工場に異動になった。黒羽刑務所のオフセット印刷工場に元々暴力団関係者が居なかったわけではない。俺が騒動を起こしたから、暴力団と関係の無い連中だけで人員を構成し直したと聞かされた。  3日後、刑務所に入って初めて体験する映画上映会にて、獄中で『ショーシャンクの空に』を鑑賞する体験をした。  初めて鑑賞した際は思わなかったが、モーガン・フリーマン演じるレッドを羨ましく思った。刑務所にはアンディのような奴は訪れない。居るのは糞と言って差し支えない無能な連中ばかり。俺は高卒だったのでかなりバカだと思っていたが、刑務所の中には読み書きすら満足に出来ない大の大人が大勢居る。自分も人殺しの糞なんだが、周りも糞ばかりで、皆が糞である。  刑務所ってのは人間の掃き溜めだ。だから皆此処に来るのが嫌で罪を犯さない。皆、法律は守った方がいいぞ。  刑務所に収監された連中は総じて暗くなる。だって、 「お前が悪い」 「自分が蒔いた種」 「自己責任」 「自業自得」  何を言っても、自分の境遇をいくら愚痴っても、結局は否定される運命に逆らえない。だから他人と喋りたくなくなるんだ。  俺は、刑務所に入って「被害者の方がつらい」と云う類の文言は世間やマスコミの嘘だと考えるようになった。  だって被害者もう死んでんじゃん。安田純平と同じさ。殺されるような真似をしなければ、あの女は殺されなかったんだ。防犯出来なかった奴ら、詐欺に騙された奴ら、お前らも悪いと言われるだろ。なら、俺の被害者達も俺に殺されるのは自己責任じゃん。  デリヘル嬢にならなければ良かった。俺に抱かれれば良かった。その証拠に、その他の全ての女性は俺に殺されていない。  全て、あの女の自己責任だ。  生きている被害者が加害者よりつらいと言うなら、俺も分かる。  だけど俺、被害者は殺すタイプだからその文句は自分の加害者にだけ言ってくれ。俺、お前らの事件には関係無いから。  俺は罪を反省するどころか、ますます社会を恨むようになった。更生なんて嘘っぱちである。一年で起きる犯罪の半分は再犯だ。結局、一度刑務所に入ったら、余程の才能が無い限り、同じことを繰り返すしかない。  まぁ、無期懲役だから関係無いけど。
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