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6:無期懲役囚の脱獄計画
49番は出所した後、自分の宗教団体に戻って同じ商売をすると豪語していた。宗教って商売なのか。666号室の全員がこいつに洗脳されるのだけは嫌だったので距離を置いていた。
すぐ49番は居なくなった。
すぐ居なくなったのではない。1年経ったからである。
無期懲役だと1年もあっと言う間に感じる。
次に居なくなったのは3年後、88番の爺さん。仮出所ではない。病気になって死んだ。
自他ともに認める糞人間の俺達も、長年同じ部屋で臭い飯を食べていると情は湧いて来る。13年の刑の176番、無期懲役の俺と189番、年の近い懲役5年の287番。この4人衆はいつの間に仲間のような関係が構築されていた。
88番の爺さんが死んだのが刑務官を通じて報告された晩は空気が重かった。88番の爺さんは俺達を孫や息子のように思ってくれていて優しかった。
消灯の時間になった。すると、俺の布団の隣に寝る189番が、珍しく話し掛けて来た。
「141番、起きているか」
「何ですか?」
「刑務官達にバレないように小声で話せ」
「はい」
俺達は真っ暗闇の中、会話を始めた。
「88番の長老は無期懲役だった」
「俺達と同じですね」
「そうだ、つまり俺達は刑務所の中で人生を終えるんだ」
「そうでしょうね」
「嫌だとは思わないか?」
「嫌ですね」
「だから、此処の4人で脱獄する作戦を考えないか?」
「止めて下さい!」
この声は287番である。
「僕は明日で刑期が終わるんです! 下手なことして出るのが遅くなるのは嫌です!」
189番は窘めるように287番に話し掛ける。
「お前の気持ちは分かる。だけどさぁ、俺達は無期懲役なんだよ。お前みたいに明日まで待てば出られるわけじゃないんだ」
「でも無茶なことはしないでください!」
「それは俺からも言っておこう」
13年の刑の176番も暗闇の会話に参加して来る。
「俺も5年以上は此処に居る。残り8年だ。俺は8年待つ方を選ぶ」
「141番、無期懲役のお前はどう思う?」
287番も176番もダメだから189番は俺を頼ってきた。まぁ、元々俺と189番の2人の間で交わされた会話だったんだが。
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