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8:無期懲役の膵臓癌
だが無期懲役だ。刑期は長い。
さらに10年経ち、平成の時代が終わっても俺と189番はまだ666号室に居た。俺達は未だに287番の話を忘れられない。
消灯して真っ暗な中、見せかけだけの就寝をし、俺達はよくあの話をした。
「なぁ、141番?」
「何ですか?」
「迷路公園の象の滑り台の話、覚えているか?」
「覚えていますよ。もう18年前ですね」
「お前は本当にあると思うか?」
「何がですか?」
「あのお前と同い年の287番が隠したって云う……」
「あの話って『ショーシャンクの空に』って映画でありましたよね」
「あった! もう20年以上も前に此処の上映会で鑑賞したよ」
「映画の登場人物なら嘘は吐かないけど、現実にはどうですかね」
「お前は信じられるか?」
「分かりません。先輩は?」
「俺は……信じたい」
「そうなんですか」
「お前が入って来る前、あいつとは仲良くしていたんだ。あいつは、根は悪い奴じゃなかった。俺はあいつを信じられる。俺とお前、どちらが先に出られるか分からないが、先に出た方が真実を確かめようぜ」
「そうですね……」
189番は膵臓がんになって死んだ。
とうとう、俺だけになってしまった。
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