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私は、目を覚ました。
起きたら病院で驚いた。事故に遭ったと教わって、もっと驚いた。
担ぎ込まれたこの病院で、処置のお陰で容体は比較的落ち着いたものの、意識が朦朧とした状態が一週間ほど続いていたらしい。片足がだいぶひどかったようで、要リハビリ。前ほど、歩けないかもしれない。傷痕は、消えないかもしれない。それでも、看病と見守りについてくれていた両親と、親子揃って少し泣いた。生きていてよかった、と。
それからちょっと笑った。意識を取り戻してからの第一声が、何を思ったか「フラペチーノが飲みたい」だったのだから。
長い長い、走馬灯をみていた気がする。それとも、白昼夢だろうか。
一命を取り留めて、私はここにいる。それを伝えないといけない誰かが、いるように思えてならない。
初冬、歩く練習をしながら、白昼夢の続きを探している。
どうすればみつかるのか見当もつかないけれど、なんとなく。顔を上げていなければ、出会えない。そんな予感があった。顔を上げて、視線を上げて。その視界に、空と一緒に映り込むような。
白昼堂々とした、誰かを。
了
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