気違い日和

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空を見上げた。 先程の小雨が嘘のように青空が広がっている。 地面には今まで「人間」だった肉の塊が真っ赤な血の海に倒れていた。 「挨拶をちゃんとしてくれる子でしたよ」 「大人しくて、そんな事する子には見えない」 「成績優秀で真面目な生徒でした」 冷たい鼠色の輪っかを両手に嵌められた私をカメラの黄色い光が降り注ぐ。 「なんでこんなことをしたんだ」 「何か悩みでもあったのかな?」 「辛い事があったのね」 初めは強面の真っ黒なおじさんが、次は優しい笑顔の水色のお兄さんが、最後に橙色の女の人が言葉を変えて「何故、殺したのか」と聞いてくる。 理由なんて聞かれても困る。 その日は空が青くて綺麗だった。でもすぐに小雨が降り出して青く綺麗な空を隠してしまった。私は青色が一番好き、でも無くなってしまったから二番目に好きな赤色で我慢しようと思っただけだ。 ただそれだけの事だ。
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