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どこかで頭でも打ったか、何か妙なスイッチが入ってしまったか。
「武威」
もしかしたら、妙なスイッチを入れたのはオレなのかもしれない。
そんな事を考えながら、武威の頬に手を伸ばす。
避けられるかもしれない、と思いながら恐る恐る触れる。
「お前、オレの事抱けるのか?」
武威が動揺しているのが分かった。
頬に触れたオレの手を、武威の手が取る。
払い除ける訳ではなく、包み込むように握られた。
「そう言う和海こそ、さっき教室で言ったのは本当か?」
質問に質問で返された。
まぁ、お互いに疑っている所なのだから仕方ない。
オレは、武威が「抱かせろ」と言った真意を。
武威は、オレが「抱かれてもいい」と言ったその本気度を。
それぞれ探り合っている。
だったらオレは、オレがいかに本気であるかを証明しなければならない。
「武威じゃなかったら絶対に嫌だけど、武威なら大丈夫」
「何が大丈夫なんだよ」
曖昧な言い方だった所為か、武威が不満そうに言う。
確かに、便利な言葉すぎた。
「もっと好きになれる」
何も考えずに口を開いたら出てきた。
ただ漠然と、そんな予感がした。
武威の驚く表情を見つめながら、そうだったらいいなと思っていた。
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