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 今はそれ程忙しい時期でもないので、少しくらい遅れてきたとしても大して支障はない。  と思った所で生徒会室の扉が開き、タイミング良く田辺が現れた。 「遅れました」 「用事があったんだろ。そっちはもういいのか?」 「はい」  訊くと、田辺はこっちを見て曖昧に笑った。  空いている椅子に座り、一息ついてから淡々とした口調で言う。 「見つかりました?」 「・・・何が」 「例のカードの差出人」  こいつといい、矢野といい、揃いも揃って同じ事を訊いてくる。  そんなに例の告白が気になるのだろうか。 「やっぱお前も気になるよな、送り主」  自分と同意見だった事がよほど嬉しかったらしく、矢野が身を乗り出す。  しかし、田辺に大して気になっている様子はない。  面白がっているようではあるけれど。 「ウチのクラスの奴かもしれませんよ、それ」 「え?」  矢野の同意を無視した田辺が、さらりと重大発言をするので、思わず間抜けた声を上げてしまった。  会話に混ざっていた矢野は当然の事ながら、うっかり耳に入ってしまったらしい武威も驚いた表情で田辺を見ている。 「つい口が滑って言っちゃったんですよ、この間の差出人の名前のないカードの事」  人がされた告白を「つい」で喋るなよ、というツッコミは見送って、田辺の次のセリフを待つ。 「そしたら、『それを書いたのは俺だ』って奴がいて」 「本物か?」  最初にそう聞いたのは矢野だった。 「さぁ? 自分で言っているんだから、そうなんじゃねぇの?」  矢野の食いつき具合が鬱陶しかったのか、田辺は少し体を引いて答えた。  それにしても、何とも投げやりな報告だ。  おまけに、とんでもない御節介。  オレは別に、あのカードの主を「知りたい」とも「知らない」とも言ってないのに。  後輩2人の暇つぶしの種になってしまったようだ。
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