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「和海」
帰り際、後輩たちはもう皆帰ってしまった生徒会室で、さっきからずっと渋い顔をしている武威に呼び止められた。
「どうした? マジメな顔して」
武威がやけに真剣な表情をしていたので、オレは少し茶化すように微笑って答えた。
けれど、武威の顔は固いままだ。
むしろ機嫌の悪さが悪化してしまったようだ。
「お前、危ねぇよ」
ぽつりと武威が呟いた。
「は?」
やけに険しい顔して、突然何の忠告だ?
「告白とか言って、簡単に呼び出されやがって」
どうやら武威は、最近になってオレが複数の人物から告白をされている事を、快くは思っていないようだ。
武威はそう言うけど、呼び出される時は告白されるなんて分からないのだから仕方ないだろ。
「もしかして告白ですか?」なんて聞ける程、自意識過剰にはなれない。
「でも、もしかしたら他の用事かもしれないだろ」
重要な用件だったら、と思うと警戒して逃げている場合じゃない。
これでもオレは、一応生徒会長なのだから。
5件に1件くらいは、重要な呼び出しの可能性があるのだ。
けれど、もっともな言い分だと思っていたのに、それは武威にとってはそうでもなかったらしい。
険しい表情のままで、「でも」と切り出した。
「会うんだろ? 田辺の言っていた奴と」
そうか。
武威が一番気になっているのはそれだったのか。
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