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 そう言えば、武威の機嫌が悪化しだしたのは、田辺があの話を持ってきてからだったかもしれない。 「ああー・・・うん」  どうしても実際に会って話をしてみたかったから即答してしまったけど、あれが地雷だったなら、武威の見てない所で返事すればよかったかな。  だけど、武威はあのカードの存在を完全に無視していたように思えたから。  田辺の言う人物も、それ程興味ないんじゃないかと勝手に思い込んでいたんだ。  それに、別にそんなに心配する程の事でもないのにな。 「でも大丈夫だよ。話をするだけだから」  どういうつもりなのか訊きたいだけなのだ。  もし告白されても、今までと同じように断るに決まっている。  それだけなのだから、危険な事はないと思うんだけどな。 「そうやって油断していて、いきなり襲われたらどうするんだよ」  強い口調で予想外な事を武威が言うから、思わずたじろいでしまった。  どうするって・・・。 「逃げるに決まっているだろ」  「襲われる」と言うのはいまいちよく解らないけど、そういう状況になったらまず間違いなく逃げるだろうな。  当たり前の答えをしたら、武威は更に質問を重ねてきた。 「逃げられなかったら?」 「叫ぶ」 「口塞がれて、声出せなかったら?」 「暴れる」 「手足縛られたら?」  次から次へと質問が押し寄せてきて、段々訳が分からなくなってきた。  一体何の話をしていたんだっけ? 「何なんだよ、さっきから」  延々と続く質問を断ち切るように、苛立った声で訊く。  まるで、監禁でもされるみたいな言い方だ。  ただ会って話をするだけなのに、どうしてそんなマイナスな方向に行っちゃうんだよ。 「だから、そういう状況だってありえるだろ」 「オレ相手にそこまでする奴なんていねぇよ」  いくら短期間に大勢から告白されたからって、考えすぎだ。
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