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見上げた先の武威が、狼狽したように顔を逸らした。
「イヤ、俺は・・・」
突き放すようにそれだけ言って、後は言葉に詰まっている様子だ。
そうだよな。
こんな事を聞かれても困るよな。
答えに窮するような事を訊いてしまって、悪い事したなぁ。
だけど、知りたかったんだ。
武威がちゃんと答えてくれたら、オレの中の答えもはっきり出たかもしれないから。
だけど。
なんだ・・・。
「武威は、違うのか」
この場合、「やっぱり」と言うべきなんだろうな。
分かっていた事とは言え、何となくガッカリだ。
「和海?」
思わず声に出ていた呟きを聞いてしまった武威が、怪訝な表情でこっちを見ている。
「変な事訊いて、ごめん。今のは忘れてくれ」
武威の腕をポンと叩いて、顔だけは笑いながらそう言った。
冗談でも、頷いてくれれば少しは楽になれそうなのに。
聞きたくても聞けなかった事を、茶化してでも言えそうなのに。
告白されたら断らないだろーなぁ、と思った唯一の相手の口からその言葉を聞くのは、やはり諦めた方がいいのかもしれない。
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