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 しかし、次から次へとよくこれだけやってくるものだ。  オレに告白だなんて、まだ若いっていうのに人生に疲れすぎ。 「その話は聞いている」  やや素っ気無く言って、ちらりと山岸に視線を配った。  計らずも目が合って、山岸がヘラリと笑った。 「好きなんですよ、荻野先輩の事が」  朝の挨拶と殆ど同じような重さで言われても、何の説得力もない。  おまけに、オレの中には相当大きな不信感もある。 「本気か?」 「当たり前じゃないですか。朝からこんな冗談言えませんよ」  なんて言っているけど、オレには性質の悪い冗談にしか聞こえない。  男に告白されるなんて状況、自分には無関係だと思っていたのになぁ。  実際、つい最近までは無関係だった。  今までと何が違うというのか。  朝からあまり時間を取られたくないから、山岸を一発で黙らせる切り札を出す事にした。 「でも、あのカードを書いたのはお前じゃないだろ」 「え・・・」  疑問符も付けずに言ってやると、それまでヘラリとしていた山岸から笑みが消えた。 「知っていたんですか!?」  驚きと焦りが混ざった、かなり大きな声だった。  予想以上の反応で、少し気分が良い。 「やっぱりな」 「・・・って、もしかしてカマかけたんですか?」  驚く山岸が不満気に言う。  最初からこいつが書いたんじゃないと思っていた。  違うだろうなぁ、って程度だったけど、今の反応で確実だ。  あのカードを書いたのも、オレの鞄に入れたのも、絶対にこいつではない。  いくらオレが教室にいない時を狙ったとしても、見知らぬ後輩が3年の教室に入ってきた らそれなりに目立つだろう。  そんな状況で、クラスの奴の誰にも怪しまれずにオレの鞄に手紙を入れるなんて難しい。  できたとしても、低確率。  だったら、確率の高い方でカマかけてみるのが良いと思ったんだ。  それに、こんなに簡単に名乗り出るくらいなら、最初から宛名も差出人名も書くだろうし、こいつのこの感じだったら直接言いに来るだろう。  気持ちを綴ったポストカードを何故か一度くしゃくしゃにして、封筒に入れるなんて複雑なことをするような奴には見えない。
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