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「マジで付き合ってないんですか!?」
何の話の拍子だったか忘れたけど、オレ・荻野和海と、友人の蔵原武威が恋人同士だと言われたので否定したら、そんな叫びを浴びせられた。
オレたちがそういう関係でなかった事が、よほど意外だったらしい。
「んな訳ないだろ、オレと武威が。なぁ?」
「・・・ああ」
オレと武威が呆れ返ったように否定しても、叫び声の主である後輩の矢野はまだ納得していない様子でオレたちを見比べている。
「だって、中等部の頃からずーっと一緒にいるじゃないですか」
「お前らだって、ずーっと一緒じゃないか」
と、矢野とその隣にいる田辺を指して言った。
「同級生で一緒に生徒会とかやっているからですよ。俺たちは、別にプライベートまで一緒って訳じゃないです」
矢野は、心の底から不本意そうに田辺を突き放すような口調で言った。
言われた田辺も、冗談じゃない、とばかりに口を開く。
「そうですよ。いくら会長でも、そんな勘繰りすると怒りますよ」
仲が良いようで悪いのか、それとも、悪いようで良いのか、矢野も田辺も互いに渋い顔をしている。
「オレたちだってそんなもんだよ」
苦笑しつつも、笑えない誤解だと溜め息を吐きたくなる。
ちなみに、「会長」というのは及ばずながらオレの事。
一応、生徒会長をやっているから、そう呼ばれる事もある。
副会長は武威で、矢野も田辺も役員だ。
そしてここは生徒会室。
ずっと役員をやっていたので、生徒会室にいること自体に違和感はない。
ただ、自分が「会長」という立場だというのは、たまに忘れてしまう。
俺と武威は、同級生で、中等部の時から同じ生徒会役員で、同じクラスになった事は一度もないけど、中等部から数えて高校3年に至る現在までの6年の間で一番時間を共にした友人だ。
休み時間とか、放課後とか。
一緒に帰るのは当然だし、学校が休みの日も遊んだりする。
そういうのは、友人と言うのだろう?
どちらかが女の子ならともかく、オレも武威も男なのだから。
と言うか、ここは男子校なのだから女の子の友人ができる筈もない。
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