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「意外とイイ性格してるんですね」  言い訳なんかするつもりはないらしく、山岸はすっかり降参したように苦笑した。  そっちこそ、意外に引き際が良い。  もっと惚けられるかと思っていたのに、拍子抜けだ。 「知らなかったのか?」 「全く」  それで失望するのはオレの所為じゃない。  オレの事を大して知らないくせに「好き」とか言う奴が悪い。  意外だと驚かれても、オレは元々こういう性格だ。 「嘘を吐く奴はキライなんだ」  他人の告白を自分のものにしようなんて輩には、愛想の「あ」の字も見せる必要はないと思っている。  だから容赦なく振ってしまえる。  元々、「振る」一択なんだけど。  けど、はっきり言ってみた所で、山岸の態度はあまり変わらない。 「まぁ、確かに嘘はつきましたけど、それだけ荻野先輩の事が好きなんだー、って事で許してもらえません?」  少し困ったように頭を掻いて、だけどあまり困っているようには聞こえない口調でそう言った。  何を言っているんだ、こいつは。 「好きだけど告白する勇気がなくて悶々としていた所に今回の話が舞い込んできて、これは利用するしか! って考えちゃっただけなんですって」  利用、しようと思うなよ。  と、心の中でツッコミながらも、つい耳を傾けてしまう。 「だってほら、荻野先輩って割と孤高の人だから。ただ単に告白しただけじゃ玉砕確定でしょ」  ・・・は?  素通りできない言葉が耳から入ってきて、立ち止まる、と言うより固まってしまった。  それはあまりにも大袈裟で、おまけに的外れな表現だった。 「お前、一度『孤高』って辞書引いた方がいいぞ。絶対に使い方間違っている」 「そんな事ないですよ」 「ある」  そこは強い口調で断言してやる。  そんな言葉はオレに使うべきではないし、使われても嬉しくない。  まるで、独りが好きみたいな言い方じゃないか。  一人でも平気なのと、独りが好きとではかなり違う。  オレは一人でも平気だけど、皆といる方が好きだし、理想だって高くない。
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