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そう言えば、最近になって何人かに告白されたけど、その相手とこれだけ長く会話をしたのは初めてだった。
どうしてかな。
告白をされても、何だか現実味がなかった。
他人事のような気分で聞いて、他人事のように断った。
オレにその気がないと分かると「やっぱり」と潔く引き下がる奴らばかりで、やっぱり現実味のない一連の会話。
山岸だけだ。
こんなに食い下がってきたのは。
それなのに、隣にいても嫌ではない。
嘘を付いてオレに近づいてきた奴なのに、不思議なほど会話が続いている。
他の奴らと何が違うのか。
何度も「好き」なんて言われて、浮かれているんじゃないだろうな。
でも、どちらかと言うと、山岸の告白には熱意がないように思えるんだよな。
恋愛感情なんてものではなくて、良い意味で自然に言っているように聞こえる。
だからなのかな。
隣にいても気にならないのは。
「嘘付いたのは謝りますから」
不意に山岸の口調が神妙なものになった。
「俺と、友達になってもらえません?」
「トモダチ???」
何とも胡散臭い響きに聞こえて眉間に皺が寄ってしまった。
小学生か、お前は。
「勿論、先輩後輩の礼儀はちゃんとします。オレ、もっと荻野先輩とお近づきになりたいんです」
必死と言うには真剣さが足りなかったけど、絆されるには十分だった。
生徒会長として、後輩にここまで言われて嬉しくない訳ない。
「まぁ、ちょっとくらいなら」
ほのかな優越感に負けて、何となく見えた下心にも目を瞑ってしまう事にした。
何しろ、山岸がどういう風にオレを好きだとしても、オレが考えているのは違う人の事で、 オレと山岸がどうにかなってしまうなんて絶対にあり得ないのだから。
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