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○ ○ ○   「荻野、また告白されたのか?」  教室に入ろうとした所で、同じクラスの宮永に声を掛けられた。  宮永も中等部からこの学校で、付き合いの年数なら武威と同じだけれど、交わした会話は挨拶程度くらいで、それほど親しい仲ではなかった。  だから、「おはよう」より先に世間話で声を掛けられて驚いた。  しかも「また」って何だよ、「また」って。 「見てたのか」 「そりゃ、あんな所で話をしていればな」  少し棘のある言い方が気になった。  校門付近で声を掛けてきたのは向こうなのだから、オレだって好きで「あんな所」で話ををしていた訳じゃない。 「荻野はただでさえ目立つのに、この時期にあんな所で後輩に告白されて、注目してくださいって言っているようなものだって」 「この時期って、どういう意味だ?」 「蔵原と別れたんだろ」  宮永が当然のように言うので、訊いたオレが非常識のような空気だ。  今更だけど、オレの情報がこんなに浸透しているとは心外だ。  矢野や田辺の言っていた通り、全校生徒レベルでオレ達の噂が出回っているということか。 「そもそも、付き合っていた訳じゃないんだけどな」  こんな事を何度も言わなればいけないなんて空しいな。  本当の事なのだから仕方ないけど。 「っていう話も聞いたけど、それはちょっと信じられないな」  訝るような宮永の言葉に引っかかる。  本人が言っているというのに、どうしてそうなるんだ。
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