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 纏まらない思考を持て余しながら、自分の席に座って例のカードが入っている封筒を鞄から取り出した。  いつもこうして持ち歩いているのは、真意が分からないから。  返事が欲しいなら、最低でも名前は書く筈だ。  それが無いのは、オレの気持ちはどうでもいいという事じゃないんだろうか。  だったら、どうしてこんなカードを書いたんだ?  自分の気持ちを知って欲しいから?  それなら尚更、名前がないのはおかしい。  そもそも、これはオレに宛てられたものなのだろうか。  何かの手違いでオレの鞄に入ってしまっただけで、本当は別の誰かへ綴った想いなのかもしれない。  だとしたら返した方がいいのかな。  オレの手元に渡ってしまって困っているだろうし。  ふと、このカードを発見した時の武威の顔が浮かんだ。  あんなに困惑した表情を見たのは初めてだった。  あの時、武威は何を思ったのだろうか。  少し胸が痛くなるカードの碧い海を思い出しながら、もう片方の手で頬杖をつく。  本当に、もう・・・。  オレにどうしろと言うのか。  更に深くなった悩みを抱えて、思わず溜め息が漏れた。
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